では、アクアポニックス(魚耕農業)には具体的にどのような特徴があるのか。ここでは、その特徴を8つ紹介する。

1. 企業のCSR活動として

食料を生産するだけではなく、生態系の循環を感じることができるのが、アクアポニックスの最も大きな特徴であり、これは企業のCSR活動とも相性が良い。都市化問題や高齢化などの課題を抱えるなか、”生きた教科書”とも言えるこの循環型農法を都市部にも持ち込み、さらには子供への食育や高齢者とのコミュニケーションの場として活躍するだろう。

2. 設置場所と規模が自由自在

土を使わない農法「水耕栽培」が基本となっているため、必ずしも農地は必要なく、家庭の庭からビルの屋上まで、様々な場所に設計、設置することができる。さらに、循環型システムとしての特徴を活用すれば、机の上に置けるサイズにまで小型化も可能。もちろん、ビニールハウスや植物工場として大規模展開することもできる。

アクアポニックスの7つの特徴
アメリカで誕生しているアクアスプラウトの卓上キット。自宅で手軽に生態系を体感することができる。株式会社おうち菜園が日本の総代理店となり販売する商品。 © AquaSprouts

3. メンテナンス負担が軽い

毎日のメンテナンスは、基本的には魚への給餌のみ。この他にも、定期的な水質チェック(pH、アンモニア・亜硝酸塩・硝酸塩濃度)や蒸発した水の追加などはあるが、植物に水を与える必要がなければ、土を耕す作業も必要もないので、高齢者や車椅子でも作業が可能。

4. 無駄のない循環型農業

生き物が出す排泄物、死骸、食べ残しなどは全てがつながり循環し、自然の生態系には一切無駄なものがないように、アクアポニックスでも自然界と同じような循環がシステム内では起こる。

魚の排泄物(アンモニア)がバクテリアによって硝酸塩にまで分解され、それを植物が栄養として吸収、綺麗になった水が再び魚に送られ、また循環は繰り返される。自然の摂理を感じることができる。

アクアポニックスの7つの特徴
小型のアクアポニックスを観察する子供たち。食育にもよい。 – Photo credit: Mananasoko via Flickr

5. 水資源に乏しい地域での活用

これは水耕栽培にも共通することだが、アクアポニックスは従来の土を使う農業に比べ、使う水を90%まで節水することができる。この特徴によって、オーストリアや中東地域などの水資源に乏しい地域でも積極的に導入されている。

6. 魚の養殖を同時に行うことができる

アクアポニックスは、野菜の生産だけではなく、同時に魚も養殖し収穫できる農法。例えば、海外では「ティラピア」(和名:イズミ鯛、スズキ目)と呼ばれる繁殖が比較的簡単な魚が多く育てられ、地域のレストランのメニューに並んでいる。

こうした理由から、食料不足問題や自給率が低い地域での導入も目立ってきている。

アクアポニックスの7つの特徴
海外では食用魚として一般的な魚、ティラピア – Photo credit: Bytemarks via Flickr

7. 土づくりの必要がない

多くの植物工場と同様、土を使わずに水で栽培する「水耕栽培」を採用しており、「土づくり」の必要性がない。これは従来の農業では非常に重要な作業とされているが、その一方で身体への負担が大きいことも確か。

従来の農業では植物は地中から養分を吸収するが、アクアポニックスではそれが水となり、魚の排泄物が養分の代わりとなる。土を耕す必要はない。

8. 無農薬の野菜(作物)のみ生産できる

もし農薬を使った場合は、植物に害はなくとも、魚が死んでしまう。循環型農法であるがゆえ、植物が受け取ったものは最終的に魚も受け取ることになる。農薬が使えない以上、アクアポニックスで収穫された作物は結果的に「無農薬」(オーガニック)となり、生き物に悪影響を及ぼす物質は一切使えないシステムとなっている。

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目次
はじめに
アクアポニックスとは
将来性と市場規模
アクアポニックスと水耕栽培の違い
ー 8つの特徴(現在のページ)
アクアポニックスの循環
選ばれる代表的な魚
アクアポニックスの歴史