では、アクアポニックス(魚耕栽培)と水耕栽培の違いは何なのか。このページでは、アクアポニックスが水耕栽培と異なる点について書いていきたい。

1. 魚も同時に養殖

まず、この特徴が一番大きい。アクアポニックスは、水耕栽培に魚の養殖である「水産養殖」の技術を組み合わせた農法だ。野菜やハーブはもちろん、同時に魚も養殖することができる。海外ではティラピア(和名:いずみ鯛)が代表的な魚とされ、収穫されたものが地域のレストランに卸されることも珍しくない。

ティラピアの料理
ティラピアの料理 – Photo credit: Etan J. Tal via Creative Commons

2. 収益性が高い

例えば、4,000〜6,000円のコストでアクアポニックスでは約23kgの魚の餌を購入、水耕栽培では約4kgの液肥を購入する。すると生産されるのは、アクアポニックスでは8株のトマトと約17kgの魚。水耕栽培では、3株のトマトとなる。同じ金額から、水耕栽培に比べてアクアポニックスは2倍以上の作物を生産できると言われる。

水耕栽培とアクアポニックスの生産コスト比較表
参照:書籍『Aquaponic Gardening』

3. CSRとの相性が良い

CSRの一環として植物工場を導入する企業は増えているが、これと同様、アクアポニックスも極めて相性が良い。キーワードは「循環性」「教育」「癒し」「コミュニティ」だ。アクアポニックスでは、魚、バクテリア、植物が循環を創り出し、食べ物が生産される。食べ物が生産される仕組みを体感することができ、食育との相性は抜群。また、魚による癒し効果も高く、そのユニークな農法は、コミュニケーションの起点となり、コミュニティ形成に役立つ。

世界の人口は2050年には90億人を突破すると言われており、この規模の人々を養うには生産量を現在から70%引き上げる必要がある。さらには都市化問題も進み、全人口の70%が都市に住む予測(※1)。こうした状況の中で「都市でも生産ができる」「循環サイクルで食べ物が生産される」という特徴から、都市での食料供給はもちろん、食べ物への感謝の気持ちを作り出す”食育”効果、それを起点にしたコミュニティ作りも可能であり、社会的価値が高い農業である。

世界の人口は2050年には90億人を突破する

4. 設備規模や場所が自由自在

循環型農業であるため、しっかりとサイクルの仕組みができれば、サイズは家庭用の卓上サイズから大型の植物工場規模にまで拡大できる。一般家庭から学校などの教育施設、公園などの公共施設、そして工場規模まで様々な場所に設置することができる農業である。

水耕栽培についても、すでに小型の栽培キットや植物工場が誕生しているが、これらは趣味としてか、体験としての設備という意味合いが大きい。アクアポニックスでもこれは同様であるが、食料の循環性を様々な規模で設置できるという点は、食育や体験としてのメリットがさらに高くなる。

5. 必然的にオーガニック(無農薬)生産

アクアポニックスでは、魚、バクテリア、植物が全て循環サイクルの一部として支え合い成長していくため、システムに投入された物質がこの3つ全てに影響を与える。よって、植物にとっては問題のない農薬(液肥)でも、魚にとっては有害であるため、原則として農薬は使用できない。必然的にオーガニック(無農薬)の作物が生産される農業である。ブラックソルジャー(ハエの幼虫)やウキクサなどを自社栽培して、魚の餌を有機にすることも可能だ。

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目次
はじめに
アクアポニックスとは
将来性と市場規模
ー アクアポニックスと水耕栽培の違い(現在のページ)
8つの特徴
アクアポニックスの循環
選ばれる代表的な魚
アクアポニックスの歴史

※1:国際連合食糧農業機関(FAO)のレポートを参照