アクアポニックスの説明に入る前に、まず簡単に「植物工場」について触れておきたい。

日本での植物工場の普及

いま全国には「植物工場」と呼ばれる施設が約400カ所(※1)ある。「植物工場」とは閉鎖的、もしくは半閉鎖的な環境で植物を栽培する施設の名称で、養液量や光量(人工光の場合)などの育成環境をコントロールできることから、「安定的な生産ができる」「天候の影響を受けない」「都市でも生産できる」などの特徴を持つ。

Photo credit: Goldlocki via Creative Commons
Photo credit: Goldlocki via Creative Commons

日本での植物工場の盛り上がりには、第一次、第二次、第三次ブームがあり、現在は第三次ブームであると言われている。第一次は1980年代、第二次は2010年頃。

そのきっかけとなったのが、2009年1月に農林水産省と経済産業省が実施した約150億円の補助金。大手ゼネコンや鉄鋼メーカー、家電メーカーなど、異なる業界からの参入も目立った。

その数は現在でも増え続け、2012年で210カ所、2013年で304カ所、2014年で383カ所。近年はさらにその勢いを増している(※1)。稼働中の植物工場の数は2009年では約50カ所、3年後の2012年には127カ所にまで増えた(※2)。

商業目的とCSR活動の一環として

植物工場を建設する目的としては、商業目的の他にCSR活動の一環としてもある。人材派遣会社のパソナは、大手町の本部「アーバンファーム」に植物工場を設置し、人々が農業に興味を持つ場作りをしている。

他にも事例としては、NTTファシリティーズによる被災地への植物工場の設置、全日本空輸(ANA)が機内食に植物工場で採れた野菜を採用した件などがある。

パソナの本部「アーバンファーム」内に設置されている植物工場 - Photo via Dezeen
パソナの本部「アーバンファーム」内に設置されている植物工場 – Photo via Dezeen

商業目的の事例としては、広島県の企業、株式会社村上農園が運営する大型植物工場や株式会社リバネスが運営する植物工場併設型レストラン「梅酒ダイニング」などがある。

2014年7月には世界最大の人工光型植物工場が宮城県に誕生。これは、2004年設立のベンチャー企業、株式会社みらいによるもの。

株式会社みらいが運営する世界最大の人工光型植物工場 - Photo via Inhabitat
株式会社みらいが運営する世界最大の人工光型植物工場 – Photo via Inhabitat

植物工場の市場規模は、2013年では約230億円、これが2025年には約1500億円になる(※3)と言われ、設備なども含めるとその関連市場規模は6,700億円になるという憶測(※4)もある。

LEDライトの普及やエネルギー効率などのテクノロジーも発達し、話題性だけではなく、技術の土台も整ってきており、いよいよ本格的に大規模工場時代に突入しようとしている。

新しい農業「アクアポニックス」

こうした状況のなか、さらに成長していくであろう植物工場市場だが、収益性がより高く、CSR効果が高いとして注目を浴びている農法が「アクアポニックス」(魚耕栽培)だ。

一体どのような農法で、どのような可能性を持っているのか。以降のページでは、その概要と将来性、特徴などについて触れていきたい。

アクアポニックスでは魚も同時に養殖する - Photo credit: USDAgov via Flickr
アクアポニックスでは魚も同時に養殖する – Photo credit: USDAgov via Flickr

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目次
ー はじめに(現在のページ)
アクアポニックスとは
将来性と市場規模
アクアポニックスと水耕栽培の違い
8つの特徴
アクアポニックスの循環
選ばれる代表的な魚
アクアポニックスの歴史


※1:http://internetcom.jp/busnews/20140709/3.html
※2:http://toyokeizai.net/articles/-/9467
※3:http://www.yano.co.jp/press/press.php/001213
※4:http://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/consumer-business/articles/ag/agribusiness-botanical-factory1.html